こんにちは、株式会社Youth Planet-転職エージェント編集部です。
今回は今話題の「残業代ゼロ法案」に関する質問にお応えします。
と報道には出ていますが…
ざっくり内容を聞いた感じでは、安い賃金で長時間労働を押し付けるやりがたを応援しているような気がして、労働環境の改善が見込めるとは思わないのですが。。
みなさんはどう思われますか??
(30代前半 男性)
「残業代ゼロ法案」と呼ばれる「高度プロフェッショナル制度」ですが、2006年頃から議論されてきましたが、現在「働き方改革」とともに更なる議論を重ね、2019年の導入を目指しています。
そもそも「高度プロフェッショナル制度」の内容を理解していますか?
長時間労働の問題改善のためとはいうものの、「残業代ゼロ法案」という呼び名からは労働者にとって不利益しかないような気がしますよね。
「残業代ゼロ法案」と呼ばれる「高度プロフェッショナル制度」はどんな法案なのでしょうか。また、法案の導入により働き方や残業代はどう変わっていくのか、詳細を解説していきます。
残業代ゼロ法案とは
まず、「残業代ゼロ法案」の内容と、対象者の条件、導入予定時期を解説していきます。
残業代ゼロ法案=高度プロフェッショナル制度
2015年に国会に提出された「高度プロフェッショナル制度」とは、いったものなのでしょうか?
この制度は、高年収で専門性が高い労働者を残業代の支払い対象から外す法案です。仕事の成果と労働時間が関連性が高くない労働者に対し、労働時間でなく成果で評価する仕組みを新たに作る制度です。
この制度は一部の専門性のある職種に就く年収が高い人が対象です。ですので労働者全員が対象となるわけではありません。しかし、対象の人達らの残業を助長しかねないとして、野党らから「残業代ゼロ法案」と言われております。
残業代ゼロ法案の適用条件
残業代ゼロ法案の対象となる人の条件はどのようなものがあるのでしょうか?
具体的な適用条件は、①特定高度専門業務の従事者、②年収が1,075万円以上の2つです。
特定高度専門業務の従事者
残業代ゼロ法案の対象となる特定高度専門業務の従事者は以下のような職種に従事する人になります。
- 研究開発者
- コンサルタント
- 金融商品のディーラー
- アナリスト
- 金融商品開発職
これらの対象者の業務は、高度な専門的知識や技術を持っており、「長時間働くほど、必ず成果が上がる」というわけではないと考えられているため、残業代ゼロ法案が適用されます。
年収1075万円以上の方
年収が1075万円以上の方が残業代ゼロ法案の対象となっていますが、この金額設定はどのように決められたのでしょうか?
厚生労働省の法律案要綱によると、全国平均年収の3倍を上回る水準額に該当する人を高度プロフェッショナル制度の対象とするとあります。
この平均年収も厚生労働省の「毎月勤労統計調査」の平均月給をもとに、「26万1020円×12ヶ月」と計算され、その3倍以上の1075万円以上の年収者が対象となっています。
残業代ゼロ法案はいつから施行される?
高度プロフェッショナル制度は、2017年9月15日には審議会が行われましたが、この法案については労働者側から「まだ実施すべきではない」と反対意見が挙がりました。2019年4月からの導入を目指して審議が続けられていますが、反対意見が多く、法案の様々な問題が指摘されており導入時期はまだ不明瞭となっています。
残業代ゼロ法案のメリット/デメリット
残業代ゼロ法案のメリットとデメリットにはどんなことが考えられるでしょうか。
残業代ゼロ法案のメリット
残業代ゼロ法案導入による労働者にとってのメリットは以下の2点です。
労働時間にとらわれず仕事ができる
この高度プロフェッショナル制度は、近年の働き方の変化を受けて、長時間労働の改善を目指したり、労働者が多様な働き方ができるようにつくられた法案です。
成果を目指して仕事をするので、無駄にダラダラ残業をして報酬が上がることがなくなり、仕事の効率化や生産性が向上し、プライベートの時間も確保しやすくなるとされています。
また、育児や介護などで働きに行くことができない人らにとって、労働時間ではなく成果報酬という働き方は、空き時間を利用して働くことができるということになりますので、子育てや介護に従事しているが、ビジネスパーソンとして高い能力を持つ人にとっては、新しい働き方になるでしょう。
時間ではなく成果に対して報酬が支払われる
これまでは、収入確保が目的で必要以上の残業を行う労働者もいました。
たしかに、労働時間に対する賃金評価には問題があります。残業をしないと仕事が終わらない労働者と、能力があり短時間で成果を出す労働者がいた場合、時間ベースだと前者の方が多くもらえてしまいます。このような働き方の矛盾を減らすことが目的の一つでもあるのです。
このように無駄に残業をして非効率的な働き方をせず、短時間で成果を出すことに注力することによって、最終的に労働効率が上がるということが期待されています。
残業代ゼロ法案のデメリット
一方、残業代ゼロ法案の導入で考えられる労働者にとってのデメリットは以下の2点です。
高度プロフェッショナル制度が残業代ゼロ法案と言われる理由
高度プロフェッショナル制度は「残業代ゼロ法案」とも呼ばれる理由は、残業時間に対しては賃金の発生がなくなるからです。
つまり、成果がでなかった場合は時間をかけていても、賃金に反映されなくなるということになります。そのため、「残業代ゼロ」を避けるには結局残業をしてでも成果を出そうということになり、結局残業を助長し、それは残業代の出ない「サービス残業」になってしまいます。
成果の評価が難しい職種がある
高度プロフェッショナル制度の対象となる職種にアナリストや研究職などが含まれています。しかし、これらの職種は、短時間では成果が出ない業種です。また、企業によっても成果に対する報酬は異なってきます。
研究職などの長時間の時間や日数が必要な職業は、すぐに成果が出せるわけではないです。この法案が施行されることによって、賃金が下がりモチベーションが下がったために、質が下がることも考えられます。
このように、ロングスパンで成果を出す業種は、常々評価基準の難しさが議論される対象で、法案成立後の賃金の格差が大きくなることが考えられます。
残業代ゼロ法案の落とし穴
労働者にとってはメリットもデメリットもある残業代ゼロ法案ですが、質問者さんのように、残業代ゼロ法案に対してマイナスイメージを持っており、導入に不安を感じている労働者の方は多いようです。
ここで残業代ゼロ法案の導入において不安視されている点を解説しておきます。
管理職にもサービス残業が助長される可能性
現状のこの制度ですと、1日8時間、週40時間までの労働規制が適用されなくなり、残業代も支給対象外となるため、サービス残業が増える可能性があります。
日本ではすでに管理監督者、つまり管理職は労働基準法において残業代の支払い対象外となっています。しかし、深夜の22時~5時までの時間は、管理職者も賃金の支払い対象とされています。
ですが、残業代ゼロ法案ではそれすら適用外になるため長時間労働が常態化する、つまりサービス残業が助長されてしまうわけです。
対象者の拡大の可能性がある
現在、高度プロフェッショナル制度の対象者は「年収1075万円以上の労働者」となっていますが、徐々に基準の金額が引き下げられるなどして対象者が広がるのではないかという不安があります。
能力のある働き手にとっては、高度プロフェッショナル制度を利用すればより賃金評価が高まります。しかし対象職種が広がったり、年収要件が引き下げられた場合には、成果を出すために残業が必須な労働者にとってはサービス残業が常態化してしまい悪循環になってしまいます。
まとめ
今回は「残業代ゼロ法案」ともよばれる「高度プロフェッショナル制度」について解説しました。
高度経済成長期に根付いた日本の残業体質はなかなか改善には至らず、現代社会の長時間労働がきたす問題は深刻なものになっています。
その中で残業代ゼロ法案が労働時間ではなく成果で評価することで、業務効率や生産性の向上と残業時間の短縮につながることが狙いでしょうが、実際のところうまくいくかどうかには疑問が残ります。
現在も残業代ゼロ法案については労働者側、企業側の見解の違いを始め、クリアにしていかなければならない点も多くあり、導入時期は確定ではありませんが、今後の動きに注目したいところです。
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